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生活のリスク

第12回:労働環境の整備と公的支援(その2)

A.Archive 副代表 越膳 恵子 

 3月も中旬を過ぎ、時折春を感じさせる暖かい陽射しに安堵する毎日となりました。
 皆様におかれましてはますますご活躍のこととお慶び申し上げます。

 今年度の最終回にあたる今回は、前回に引き続き「労働環境を整備するためのポイントその2」として、皆様の企業と社員を守るためのポイントをご紹介します。


1.労働環境の整備~社員を守り、その能力を活かすために~

 今回は、社員の立場や処遇に対するさまざまな支援についてお伝えします。

 企業には、社員全体の労働環境の整備のほか、雇用形態や家庭の事情を抱えた社員についても、各々が働きやすいよう支援することが求められます。
 法令遵守を前提として、企業と社員の状況を考慮に入れ対応していくことになりますので、「知らなかった」というようなことがないよう、心の準備をしておくことが必要です。

2.労働環境整備のポイントと公的支援

(1)管理監督者の要件
 最近ニュースなどでよく耳にする「管理監督者」の要件について、お話ししておきましょう。

 この「管理監督者」とは、労働基準法で定められている定義です。
 大事なのは、「会社の役職(管理職)」≠「管理監督者」ということです。
 いくら次長・課長などの名称がついていても、法的基準を満たさなければ、「管理監督」とは認められません。

 では、管理監督者の定義づけを見てみましょう。
a.始業・終業時間など、原則として労働時間の制約を受けない
よって、時間外割増や休日手当の支払いの必要はありません。
ただし深夜割増は支払います。
b.部下の人事管理・労務管理を担当する
実際に、社員の評価やモチベーション向上の働きかけ、残業のバランス等をはかる業務を担う立場です。
よって、自分の担当部署を小さな会社と考え、部下を統括するくらいの責任とやりがいのある職務と言えるでしょう。
c.経営者と一体となり業務にあたっている
上記b.に関連しています。
d.相応の報酬・手当が支払われている
時間外割増を支払わないので、実際の社員よりも報酬の実学が少ないというケースがありえます。
しかし、上記a.~c.の業務を考えると、相応の報酬がなければ現状にそぐわないことになります。
ケースにもよりますが、大体の目安として、せめて時給換算に換算しその45時間分(原則の36協定における1ヶ月の時間外労働の上限)以上の管理監督者手当があると、相応の報酬と言えるのではないかという見解をよく聞きます。
 管理監督者の権利の面からいうと、この条件に該当していないと、通常の社員とみなされ、時間外割増手当未払いを主張されたとき、抗弁をすることができません。
 逆に義務の面からいうと、上記b.・c.の業務に対する資質が問われてきます。

 さらに企業の側からすると、社員の評価や人事管理を任せることができるため、大変頼りになると同時に、経営の方針なども相談・協議していくことができる大事な戦力となります。

 最近は、この「管理監督者養成」のためにカリキュラムを組み研修している企業もあるようです。
 長いスパンで人材配置を考え、肩書きなどにとらわれず検証してみましょう。

(2)非正規雇用社員の待遇
 すでにご存じのように、雇用形態の多様化に伴い、非正規雇用とも呼ばれる短期、短時間労働者が増加の一途をたどっています。
 社会情勢に対応する形で平成5年に成立し、このたび改正された「パートタイム労働法」について、ぜひご承知おきください。

 ここでいう「パートタイマー」も、企業で使われている呼称に限らず、契約社員や臨時社員といった、すべての短時間労働者が含まれます。
 概要としては、「パートタイマーの福利厚生を確保し、常勤社員に近い労働条件の確保をする」というものです。
 パートタイマーであっても、一定の要件を満たせば、社会保険や年次有給休暇が付与されることになっています。
 就業規則に定められていないと、常勤社員の就業規則がそのまま適用になってしまうこともあります。
 今後雇用形態を増やそう、一時的に補充し効率的に人材配置を行おうとお考えの経営者の皆様には、ぜひご理解いただきたいテーマです。

 パートタイム労働法の改正の詳細については、厚生労働省のWebサイトをご参照ください。
 http://www.mhlw.go.jp/topics/2007/06/tp0605-1.html

(3)育児及び介護者への両立支援
すでにご存知の通り、少子高齢化に伴う育児両立支援・介護両立支援は、終身雇用を採る企業にとって、将来申請する社員が出てくる可能性が高いテーマといえます。
ここにその概要を示します。

a.育児両立支援
  • 産前産後休暇:産前42日(6週)・産後56日(8週)の休暇が法的に認められます(有給か無給かは会社の任意で就業規則に定めておきましょう。以下の項目についても同様です)
  • 育児休暇:子供が1歳に達するまで、休業すること
  • 勤務時間短縮:子供が3歳に達するまで、労働時間を短くすること
  • 子の看護休暇:社員1人につき、1年に5日まで子供の看病や通院のため休めること(年次有給休暇とは別枠)
b.介護両立支援(一定の介護状態にある場合)
  • 介護休暇:家族一人当たり通算93日までの休暇
  • 勤務時間短縮:上記介護休暇の日数が限度
 この中の大半は、「社員が申請してきたら必ず与えなければならないもの」です。
 ただし、産後6週間の休暇は社員の申請に関わらず、法定で必ず休ませなければなりません。
 最近は、社員自らが産前ぎりぎりまで働くことを望み、育児休暇も3ヶ月くらいで復職するというケースも多いようです。

 育児・介護休業法の詳細については、厚生労働省のWebサイトをご参照ください。
 http://www.mhlw.go.jp/general/seido/koyou/ryouritu/pamph/dl/01.pdf

 このような法律を知りながらも、実際には人が足りない、他の社員に負担がかかってしまうという理由から、休みを取りにくい風土になっている企業をよく目にします。
 社員全員に与えられている権利なので、せめて企業側としては、代替社員(期間雇用)を確保したり、他の社員の声を聴き残されたメンバーが働きやすい環境を作ることで、全員にほぼ公平な対策を講じておくことが必要です。

 1年間、企業とその社員の皆様のリスク対策について、さまざまな角度からお伝えしてまいりました。
 中でも労使間の問題は、報酬や退職金から細かな規程に至るまで、さまざまな法的支援と制限がかけられています。
 本来、企業と社員は高めあい、支え合い、喜びを分かち合う関係です。結婚のときの誓約に似ていますが、採用というのは、それほど企業そして社員の一生を左右する大きな決断なのです。
 この法的制限を理解し支援を上手に活用することで、皆様の企業はより一層結束力がある経営基盤を作っていかれることでしょう。


 今後益々のご発展を、心よりお祈り申し上げます。
 1年間のご愛読、誠にありがとうございました。