中小企業が何かのテーマについて困ったときに専門家の相談・指導が受けられる比較的使いやすい制度として「専門家派遣事業」という制度があります。財団法人さっぽろ産業振興財団札幌中小企業支援センター(TEL:200-5511)と財団法人北海道中小企業支援センター(TEL:232-2402)がそれぞれ制度を持っています。
派遣される専門家を中小企業診断士、技術士、情報処理技術者、税理士、公認会計士、その他専門知識や経験を有する者の中から選ぶことができます。費用は、財団法人さっぽろ産業振興財団札幌中小企業支援センターの制度では1時間あたり13,650円のうち3分の1を企業が負担しますが、企業の場合、初回訪問の2時間分のみ、ありがたいことに財団が全額負担してくれる場合が多くなっています。財団法人北海道中小企業支援センターの制度では1日あたり54,000円のうち3分の1を企業が負担することとなっています。派遣される専門家には守秘義務があるので安心して相談・指導を受けることができます。
私自身も専門家として平成15年度、市内の創業間もないA社に財団法人さっぽろ産業振興財団札幌中小企業支援センターの専門家派遣事業で派遣され、会計ソフトの使用による経理処理、金融機関借入書類の作り方(試算表、資金繰り表など)、従業員の年末調整、などをお手伝いしました。派遣回数は全部で5回でした。これをきっかけにA社の担当者が経理の勉強をさらに進め、会計ソフトの使い方にもすっかり慣れ、今では自ら月次決算事務ができるようになっています。また、金融機関との借入取引もスムーズに行っているようです。
また、札幌市内に食品工場を持つB社でも、財団法人さっぽろ産業振興財団札幌中小企業支援センターの専門家派遣事業で技術士の専門家を派遣してもらい、工場内作業の改善による労働荷重の軽減および生産効率向上に関するアドバイスを受けました。3回の派遣により改善策のレポートを作成してもらいました。レポートで提案された作業改善のための器具を、技術士に紹介された企業に発注・試作し、実際に作業時間の短縮に向けた効果が見込める状況に近づいています。
この制度は、派遣費用全体の3分の1程度について企業の費用負担が発生しますが、負担金額に比べメリットの大きいケースが多いと思います。なお、申し込み方法は、「専門家派遣要請書」を財団に提出します。その際、財団に相談し、各専門家の経歴を見て自社のニーズにあった専門家を選ぶと良いでしょう。申し込み企業が対象用件を満たし、目標や効果が明確であれば専門家が派遣される可能性が高いと思います。ただ、両財団とも申し込み時に年度の予算の範囲を上回っていれば申し込みしても承認されないので、早めに申し込みましょう。
創業まもない企業の場合、本業を最優先するのでどうしても総務や経理が後回しになりがちです。また古くからの中小企業でも自社の人材だけではIT化に十分対処できていない場合が多く見受けられます。このような場合、その分野のプロフェッショナルな人材を採用するのがベストですが、必ずしも効果に見合わないコストがかかりますので、この「専門家派遣事業」を活用し、その後、自社で担当する人材を育てる方がメリットが大きいのではないかと思います。
(筆者:佐々木 恵一(37) ササキ財務経営研究所代表 中小企業診断士、証券アナリスト。略歴:金融機関、シンクタンク勤務を経て平成15年7月から開業、事務所は札幌市産業振興センター3階)