
—札幌市ものづくり産業活性化支援事業が、市内ものづくり産業の競争力・成長性を高めることを目指してスタートしました。
荒磯氏(以下A) わが国が国際社会の中で高い競争力を発揮するには、日本経済の牽引役であるものづくり産業の底辺を広げることが不可欠です。国では2000年頃から経済産業省による産業クラスター計画、文部科学省による知的クラスター創成事業などを相次いで実施し、産学官連携による産業形成に力を入れています。さらに地方自治体も独自の支援制度などを設け、地場の産業活性化に取り組んでいます。ものづくり産業を発展させ地域経済を活性化させることは、わが国の重要な施策のひとつとなっているのです。
—その中で札幌のものづくり企業が抱えている問題にはどのようなものがありますか。
A 札幌に限らず、北海道には中央依存の体質や支店経済など負の要素がいまだに残っています。地域や企業が互いの得意分野を持ち寄り、知恵を出し合って新しい技術や製品を創り出すという経験をしてこなかったため、地域連携・企業連携・産学官連携がスムーズに進まない。それが、北海道のものづくり産業がなかなか発達しない根本的な原因になっていると考えます。
私が部門長を務めている北大創成科学共同研究機構プロジェクト研究部門は、こうした状況を変えるため地域における産学官連携を推進しています。産学官それぞれの文化を融合し、従来のモノや仕組みを超えた新しい技術や考え方を取り入れ、新しい価値を生み出す「地域イノベーション」を精力的に推し進めています。
—地域イノベーションはどのように創出・進展されるのでしょうか。
A 地域イノベーションの進展は(図1)のように示すことができます。商品アイディアから販売まで一連の流れがありますが、まず
スタート時に必須のアイディア創出には社会ニーズに直面している地域企業が主体的な役割を果たす必要があります。次に企業と大学等の研究者とのマッチングを促す仕組み(図ではサロン)が必要になるでしょう。大学・研究所と地域企業の間にはギャップがあり、ここをブリッジするには公設試験研究機関や地域科学技術財団などの役割が大きくなります。さらに、市場開発から販売までは産産連携(企業連携)によって進められるのが理想的です。イノベーションが進展し、ビジネスが成長すれば地域だけで完結しない場合もあり、より広範なネットワークを形成していくことが必要になってきます。
ここでカギを握るのは、コーディネーターの存在です。大学・研究機関での学術研究と企業の産業技術化研究では、研究に対する考え方や取り組む姿勢が異なります。全く違う文化を持った両者を融合させるには、市場ニーズに適した技術をコーディネートし、商品アイディアから販売までのプロセスをマネジメントするキーパーソンが必要なのです。
—コーディネーターやマネージャーにはどのようの人材が適していますか。
A プロジェクトに参加している事業体から選出するのが望ましいと考えます。枠組みや立場にこだわらず、現場を最もよく知り、なおかつコーディネーターに適した人物を適切に配置することが重要です。過去の成功例を見ても、マネジメントの専門家を招くより、現場の人間が兼任するほうが結果的にうまくいっているようです。

—札幌で地域イノベーションを起こすにはどうすればいいのでしょうか。
A 札幌は非常に高いポテンシャルを持っていると思います。コーディネーターやマネージャーを務めるに足る有能な人材もたくさんいます。今はまだ彼らを発掘し適切に配置する機会が少ないだけなのです。しかも、札幌には優位性のある大学研究や企業集積もある。地域イノベーションを起こす素地は整っているといえるでしょう。だからこそ、それをまとめる人材の発掘と育成が最重要課題であり、これに関しては行政や自治体が戦略的に推進していくことも必要ではないかと思います。
また、本機構のある北大の北キャンパスエリアは北海道立工業試験場をはじめとする公設試、北海道産学官協働センター(コラボほっかいどう)などの連携支援施設、製薬会社のイノベーションセンターなど、産学官の施設が集積しています。大都市の中心部にこれほど大規模な産学官連携ゾーンを持つ地域は他にありません。こうした優位性をいかに有効活用して札幌発のイノベーションを進展させていくか。それが今後の課題です。そのためには、産学官のすべてが連携の重要性を認識し、一人ひとりの意識や行動を変えていくことが大切ですね。
—意識や行動を変えるには何が必要でしょうか。
A 「情報を集める」ことです。外の世界を知らずに内部を改革することはできません。広く全国・世界に目を向け、他地域の実情を見聞してこそ、自分たちの特長を発見することができます。自治体や産業界も率先して道外との交流や情報収集に力を入れるべきだと思います。また、産学官連携は90年代から本格的な取り組みが始まり、全国各地で10年に及ぶ実績を重ねています。その中には多様な成功例・失敗例があり、学べることも多いでしょう。
地域の内外で自在にネットワークを形成し、フレキシブルかつスピーディにプロジェクトを遂行する仕組みが醸成された地域は、やがて産学官の区別もなくなり、ただの「連携」だけが存在するようになると思います。互いの立場や文化の違いを意識することなく、自由に連携できる環境が札幌に生まれることを期待しています。
| 事 業 者 名 | 事 業 名 |
|---|---|
| 北海道システム・サイエンス株式会社 | チップ自動整列機の開発 |
| 田尻機械工業株式会社 | 雪氷利用輸送システムの開発 |
| システム事務器株式会社 | PP(ポリプロピレン)製パッケージの開発 |
| フルカワ・テクノロジィ株式会社 | 粗製グリセリンを主燃料とする 温水ボイラーの開発 |
| 株式会社ヤマチ工芸社 | ユニバーサルソファの開発 |
| 株式会社エルムデータ | フェリー乗船中でもデータ通信が可能な 保冷車の輸送品質管理システム |
| 事 業 者 名 | 事 業 名 |
|---|---|
| ビジネスマッチング推進実行委員会 (代表企業:株式会社プラウシップ) |
ビジネスマッチング支援事業 |
| ICCものづくり工房 (代表企業:株式会社Will-E) |
札幌地域におけるデザイン&ものづくり ネットワークの形成 〈「屋台製作」ワークショップの実施〉 |
| 事 業 者 名 | 事 業 名 |
|---|---|
| 川越製袋株式会社 | 営業社員研修 |
| 株式会社プリプレス・センター | Web名入れシステム開発に関する 人材育成 |