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業界インタビュー

流通・卸業界は企画開発の時代へ 生活に密着した視点が魅力ある商品を生む
激動する世界経済の中で、札幌市民の消費生活も大きく揺れ動いている。本州資本の大手スーパーやショッピングモールが次々と進出する一方、地元の小売店や商店街は苦しい状況が続く。札幌圏の流通・卸業界も淘汰と変革の時代に入り、より戦略的な事業展開が求められている。今回は、靴製造販売の老舗企業(株)ダテハキ代表取締役・守和彦氏に寡占化の進む流通業界で勝ち残るには何が必要かをうかがった。
中央集中を逆手に取り、
地方で勝ち抜く戦略を展開
株式会社ダテハキ 代表取締役 北海道中小企業家同友会代表理事 札幌卸商連盟副会長 守 和彦 氏

—流通・卸業界では、卸売業者や小売業者を経由しない、いわゆる「中抜き」が常態化し、冬の時代と言われていますが、札幌ではどのような状況になっているのでしょうか。

守氏(以下M) 流通・卸業界は札幌の経済を支える産業の一つとして重要な地位を占めています。しかし、現在は大きく様変わりしています。本州や首都圏の百貨店、量販店、チェーン店などが多数進出しており、地場の小売業が衰退し、我々靴業界も地場の靴専門の小売店は減少し、スーパーなどに店を構える大手系列店が増えています。「北海道」で開発した商品を「北海道」で売りたいと思っても、販売店のバイヤーの多くは東京や大阪の本社にいるわけです。中央とのパイプを持ち、本部のバイヤーに認められなければ北海道の店舗で商品を販売してもらうことができないのです。この流れに乗り遅れた企業は次々と淘汰され、1970年代に北海道の靴業界をリードしていた老舗の靴卸会社のほとんどが姿を消していきました。我々が子どもの頃に靴を買いにいった靴屋さんもほとんど残っていません。寂しいことですが、それが現状なのです。

—御社はいち早く1986年に東京支店を開設していますが、これにはどのような戦略があったのでしょうか。

M 当時はちょうどバブルが絶頂期に向う頃で、量販店が全国に急速展開をしはじめた時期でした。その一方で、コンピュータの発達により商品管理の一元化が進み、セントラルバイイング(※)が浸透していきました。つまり、それまでは店や地域ごとに仕入れ担当者を置いていた企業も、本社で一括仕入れを行うようになったのです。このような状況を目の当たりにし、今後は中央とのつながりが重要になると感じて東京進出を決断しました。本社で一括仕入れをするということは、全国のメーカーや卸が集中する中でし烈な競争にさらされることですが、それは逆にチャンスでもあると思います。中央のバイヤーは地方市場の状況を詳しく把握することが至難です。北海道や札幌のマーケットをよく知る私たちが生の情報を提供することでバイヤーにとっての存在価値を高めることができると考えました。きめ細かい情報をリアルタイムで提供するには、中央に拠点を置くことが不可欠でした。

寡占化する市場の中で
独自の商品力を磨く

—全国の競合他社と差別化を図るにはどのようなことが必要でしょうか。

M 自社製品を開発することです。それも魅力ある商品でなければなりません。マーケットニーズに合った商品を適度な価格で提供できることが必須条件ですね。
 今後、市場の寡占化はさらに進むことが予想されます。もはや、メーカーが作ったものを販売店へ卸すだけではやっていけない時代と考えています。当社では徹底して「北海道」にこだわった商品開発を続けています。札幌は1シーズンに6メートル以上の雪が降ります。これほどの降雪量がありながら190万人もの人口を抱える都市は世界的にも珍しい。ところが、わが国の靴メーカーの多くは首都圏から西日本に広がっており、北国仕様の靴の開発はほとんどなされていません。札幌に合う靴を作ることができるのは北海道の靴メーカーということになる。それが他社にはない強みになるはずです。

—商品開発のヒントはどこから得ているのですか。

M 当社には商品開発専門の部署はなく、全社員で考えています。ヒントを得るのは自分の家族や友人など身近な人たちから。暮らしの中でのちょっとした困りごとや「こうだったらいいな」という思いは、そこで生活している人にしかわからない。そんな生活の細かい部分をニーズとして捉えた靴が特長ある商品となるのです。
 自分たちが予想したものとはまったく違う市場でヒットする場合もあります。当社が82年に開発した雪かきブーツは、朝の雪かきを少しでも楽にしようと足が冷たくならないように考えたものでした。ところが、発売してみると大阪や九州や埼玉などから注文が来る。山岳カメラマンや業務用冷凍庫で作業する食品業者など、使う人も使用目的もさまざまでした。特定の場面を想定した商品であっても、消費者は自分の生活に当てはめて使い方を考えてくれる。小さい部分に着目した商品開発でも、明確な特長を持たせられれば、マーケットは決して小さくないということを感じました。

脱ローカルの成功は
地場の足固めが決め手

—中央進出を成功させる秘訣はありますか。

M 中央で仕事をする人間に決裁権を与えることと、じっくり構えることでしょうか。現代はスピードの時代です。東京での交渉をいちいち札幌本社で審議していたのではチャンスを逃してしまいます。その場で判断し即決できる人材を配置することが重要です。しかし、取引先との信頼関係は一朝一夕に築けるものではありません。成果が上がらないからといってすぐに撤退するのではなく、成果が上がるまで粘れるように本社がバックアップしていくことが大切だと思います。当社は現在、売上の7割を道外で上げていますが、最初からバイヤーとの太いパイプをつなげたわけではありません。道内で着実に成果を積み重ね、中央では少しずつ取引先にとっての存在価値を高めて信頼を獲得していったことが今につながっていると思います。積極的に外へ出る勇気を持つとともに、自分たちの足元をしっかり見据え、風潮や流行に左右されないスタンスを維持することが大切ですね。

北海道発のヒット商品「ムートンブーツ」
2009年春向けムートンブーツ

 (株)ダテハキが95年に開発・販売したムートンブーツは同社の存在感を高めた超ヒット商品である。社員がオーストラリアで生産された室内履きをヒントに、内側がボアになっている保温性の高いブーツを雪道対応に考案。北海道の冬用ブーツとして発売されたが、女子高生のファッションアイテムとして爆発的に流行した。今では全国へ広がるロングセラー商品となり、沖縄県でも販売されている。製造拠点を中国やベトナムに置くことで価格を抑え、豊富なカラーバリエーションも揃えている。靴底から約3センチの高さまで防水仕様にするなど、細かなニーズに対応している点もヒットの要因といえる。09年春にもカラフルな新シリーズが登場する予定だ。

(株)ダテハキ 〒060-0906 札幌市東区北6条東4丁目8-37 
TEL(011)721-2181 FAX(011)721-2812
URL http://www.datehaki.co.jp/(新しいウィンドウが開きます)


※ セントラルバイイング/本部で物品を集中的に仕入れること。