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業界インタビュー

花井社長

業態変革が迫られる印刷業
新たな連携で札幌ブランドの発信を担う

都市型産業といわれる印刷業は、札幌では年間1,000億円以上の出荷額で福岡をしのぐ。しかし、インターネットなどデジタルメディアの普及で情報の流れは大きく変わり、印刷業も変革を迫られている。印刷業の現状と札幌の強みを活かした将来展望について北海道印刷工業組合連合会副理事長の花井秀勝氏にお話をうかがった。
国際化や高度情報化によって
変革を迫られる印刷業
花井社長

—札幌市の印刷業の出荷額は、製造業で第1位の食品に次ぐ産業ですが現況はいかがですか?

花井氏(以下H) 札幌市の印刷業は1000億円を超える出荷額ですが、官公庁の印刷発注が減るなど地場のマーケットは縮小傾向にあるため、ITの活用や高付加価値の製品づくりで他地域へマーケットを広げる必要があります。また、国際化、高度情報化、少子高齢化、成熟化といった環境変化に対応する業態変革の必要に迫られています。従来は輪転機を回すのが印刷業でしたが、情報流通は大きく変化しています。

—インターネットが普及して高度情報化が進展したために印刷の役割が減ったということでしょうか?

H インターネットを紙媒体で補完したり、紙媒体からQRコードでインターネットの動画にまで誘導したりと印刷の内容が大きく変わったということです。また、デジタル技術により製版工程が不要なワークフローが主流となり、分業化されていた関連産業の再編がすすんでいます。

—印刷業は今、どのように変わろうとしているのですか?

H 製造加工業にサービス業を加えた『情報価値創造産業』に向かっています。たとえば、経済産業省では紙業印刷業課が廃止され、メディアコンテンツ課がテレビコマーシャルやDVD、テレビゲームなどの業態と一緒に印刷業を所管するようになりました。
 それに対して、全国約7,400社が加盟する全日本印刷工業組合連合会としては、業態変革推進プランをうちだし、新創業を提唱しています。顧客を基準とし、社会の変化の潮流をとらえ、競争力を高めるというものですが、具体的には『ワンストップサービス』です。つまり、分業化や子会社化されていた印刷付帯サービスを自社化し、総合受注することで顧客満足度を上げていくやり方ですね。

—業態変革による人材育成にはどのような課題がありますか?

H 印刷業は長い歴史をもつ企業も多く、技能の高い職人が多いのですが、ワンソース・マルチユースに対応できるようXML(*)や、Flashを操るなど多彩なソフトを扱うことができたり、付加価値を高めるデザインやマーケティングができる人材を育成しなければなりません。そのためには、地場の他産業との連携や札幌市立大学でデザインを修得した卒業生の人材確保にも期待がかかります。

*XML/Web上にシンプルなフォーマットで文書構造を記述する言語で、目的に応じて独自にタグを定義できる

■印刷業と異分野産業との連携による札幌のブランド化へ
印刷:平成17年度/工業統計調査より、情報:平成17年度/(社)北海道IT推進協会「北海道ITレポート2006」より、食料品:平成17年度/工業統計調査より、飲食店:平成16年度/サービス業基本調査より、観光:平成17年度 札幌市観光産業経済効果調査より
情報産業との連携で
札幌の強みを活かした業態変革を

—印刷業も急速に国際競争が激しくなっていますが、どのような要因によるものですか?

H 人件費の安い海外での印刷が増えたことが第一です。海外に高速回線で大量の印刷データを送り高精度の印刷機を現地に導入することで、製版フィルムを送るコストを考えずにすみ、高品質の印刷物をつくることができます。また、最近は小ロット化がすすみ、オンデマンド印刷が増えたため、海外が有利なケースが多くなりました。今後、付加価値をつけた製品を開発していかないと国内生産は増えません。

—そのようななかで、札幌の印刷業の強みは何でしょうか?

H ひとつは、地理的条件です。周辺部の広大な土地に新たな工場建設が可能なため、情報漏えいリスクに対応できるセキュリティ度の高いデータ管理システムを構築した先進的な設備をつくることができます。また地震が少ないのもデータ管理に有利です。しかも千歳を経由した国内外の交通アクセスの良さも強みでしょう。
 もうひとつは、いわゆるサッポロバレーと言われる情報産業とのコラボレーションに大きな可能性があることです。

—IT企業とのコラボレーションはすでに始まっているのですか?

H 個々の企業同士の連携は多少ありますが、今は点と点なので、これを線に結び、さらに面にしていかなければなりません。札幌のIT企業には印刷領域に近い事業も多く、これまでにも宛名ソフトや製版のレイアウトシステムなどを開発しています。またIT企業が多数加盟するNPO法人ユニゾン(札幌市IT振興普及推進協議会)には印刷業の企業も10数社参画しています。このように環境は整っているのですが、コーディネート役が不足しているのでコラボレーションがすすまないのです。行政の支援も必要かと思います。


札幌のブランドづくりに
印刷業の大きな可能性
花井社長

—今後、業態変革によって印刷業の企業群はどのように変貌していくと考えられますか?

H 大きく三つに分化すると思います。ひとつは、高品質で最新の印刷機を24時間稼働させて印刷物をつくる業態。次に、企画からマーケティング、デザイン、印刷、発送業務までの一連の業務をトータルで受注するフルフィルメント型。三つめは、たとえば美容室など特定の分野などに特化して専門性を高め、マーケットを全国化する業態です。そういう意味ではすでに地域間競争は始まっており、札幌の企業でも東京に営業所を構えるところが増えています。

—地場のマーケットが縮小する中で、札幌の他の産業との連携は考えられませんか?

H それはありますね。実は、さっぽろスイーツの人気が高まることでパッケージ印刷の売上が2%増となりました。そのほかにも、食品加工業との連携で新規マーケットが開拓できる可能性があるでしょう。それから、観光では、近年外国人観光客が増えていることで多言語の印刷物製作が重要になってきます。

—印刷業関連にとどまらず、異分野と連携することで新しい事業分野が開拓できるということですね。

H 異分野の中小企業が連携して、強みを持ち寄り新たな事業活動をおこなう、いわゆる新連携を支援する法律もできています。札幌では、特に観光に目を向けると良い素材が揃っています。たとえば、最近リニューアルされた札幌中央卸売市場などを「北海道のおいしいものが集まるグルメタウン」として、モバイルや印刷物を効果的に組み合わせて情報発信すれば、築地や錦市場のような全国ブランドになる可能性があります。札幌のブランドづくりにおける異分野との連携で、印刷業の果たせる役割は大きいと思います。