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業界インタビュー

富田氏

北海道の特性を活かしたバイオ産業
新たな構想で“Bio-city Sapporo”の確立を目指す

北海道のバイオ産業は、年間の売上高約300億円、ベンチャー企業数全国第2位を誇り、今後さらなる伸びが期待されている。また2007年6月には文部科学省「知的クラスター創成事業(第II期)」に、札幌地域を中心とした「さっぽろバイオクラスター構想(Bio-S)」が採択され、国際競争力あるバイオクラスターの形成に向け、地域全体で取組みを進めている。バイオ産業の現状と札幌地域の特性を活かした将来展望について、北海道バイオ産業振興協会会長(HOBIA)の冨田房男氏にお話をうかがった。
「食」・「健康」・「環境」が
キーワード
富田氏

—北海道のバイオ産業の売上高はこの5年で100億円近くの成長を遂げていますが、成長の要因は何でしょう?

冨田氏(以下T) 2000年以降、北海道大学を中心としたバイオ研究機能の集積、「バイオ産業クラスターフォーラム」を中心とした道内バイオ企業のネットワーク化など、バイオ産業の成長を支える基盤が整えられるとともに、道産の農林水産資源を活用したアグリバイオ企業の設立が進み、それが産業全体の成長に結びついたといえます。

—他の地域と比べて、特に札幌のバイオ産業の強みはどこにあるのでしょうか?

T やはり、道産資源を活かした「アグリバイオ分野」が他地域との差別化を実現しています。特に機能性を付加した健康食品は、国内外を問わず需要が高まっており、さらなる成長が期待されています。また、農地の保全に関する技術開発や、水の再利用など環境分野も盛んになっています。

—世界に挑戦できるバイオ分野は何ですか?

T 健康食品と医薬品です。ただ、どちらの分野も一企業だけでは研究開発が容易ではありません。世界各地を概観すると、これらの分野で活躍している企業は、地域の研究機関の力を上手く利用しています。ぜひ道内の医療系大学には、道内企業に力を貸してもらいたいと思います。


産」「学」「官」+「金」の連携強化で
札幌のバイオ産業の変革を

—札幌地域のバイオ産業にはどのような課題がありますか?

T 創薬を中心とした医薬品分野の研究開発の強化です。ここ数年、ようやく北大北キャンパスを中心とした医薬品の研究・開発が始まりましたが、この動きをさらに広げていく必要があります。なぜなら、医薬品は利益が非常に大きいだけではなく、先端的な科学技術を用いる分野であるため、そこで得た知見を他分野にも転用できるためです。

—また、北海道の長年の課題として、優れた道産素材の付加価値化があります。

T そうですね。私が会長を務めているHOBIAでも重要なテーマとして取り組んでいます。付加価値化に必要なのは「技術」ですが、残念ながら道内企業は規模や資金の問題もあり、技術への取り組みが遅れています。そのため、行政による支援策が必要ですし、大学も支援体制の中に積極的に参画すべきです。たとえば中小企業が気軽に技術相談ができる「バイオ110番」的な相談窓口を設けることは、すぐにもできると思います。

—企業側にも求められることがあると思いますが?

T バイオ産業は、素材の探索・開発から販売までの各段階で、時間的・資金的コストが膨大にかかる産業です。そのため、まず各企業は自らの強みを活かし、弱みを補える“企業連携”を模索する必要があります。北海道のバイオ産業ネットワークは、HOBIAも含めいくつかありますが、今後は産学官の中に、金融機関が入ったネットワークの形成が望まれます。


新たな構想で見える
“Bio-city Sapporo”への可能性

—諸外国と比較して、欠けている要素は何でしょうか?

T 北海道経済産業局がまとめた「北海道バイオレポート2007」によると、北海道のバイオ産業は全国平均の約4倍近い成長率で設備・研究開発への投資も大きく増加するなど、いまだに力強い成長を続けています。次に必要なのは、最先端の研究を行う“拠点の形成”です。先端的な研究所がある欧米の地方都市は、それぞれ独自の存在感を持っていますよね。そんなふうに、札幌市が中心となって恒久的な研究機関、たとえば「札幌先端研究院」のような機関を設立し、世界トップクラスの研究者を招聘することに力を入れるべきだと思います。

—大学に期待される役割はどのようなものでしょうか?

T 大学の使命は「教育」、「研究」、「社会貢献」の3つです。まず大学は、熱心な教育・研究活動を行うことで、優れた人材の輩出と研究シーズの産出を行うべきです。また、私は研究機関の技術移転を促す「北海道ティー・エル・オー株式会社」の社長も務めていますが、残念ながら大学からの研究シーズ情報はまだまだ不足しています。大学は、研究シーズを出すことが重要な社会貢献であることを改めて自覚してほしいですね。

—今年、知的クラスター創成事業に「さっぽろバイオクラスター構想(以下、Bio-S)」が採択されました。これにより、先端研究や産学官連携が促進されると思いますが。

T そうですね。非常に時機にかなった採択であると喜んでいます。世界的に見ても「健康」がビジネスのキーワードとなっていますが、Bio-Sは、北海道の優れた素材から有用素材と成分を実用化し、機能性食品・化粧品、そして長期的にはバイオ医薬、リード化合物(*)の開発を目指すものです。

*リード化合物/新薬創製のスタートとなる化合物のこと

—Bio-S成功のために、ご提言をお願いします。

T こうした研究プロジェクトでは、研究成果を生み出したものの、終了後は尻すぼみになってしまう傾向があります。そこでぜひお願いしたいのは、終了後も研究成果を応用・発展させる仕組みを作ることです。来年、北大北キャンパスに「ビジネス・インキュベーション施設」ができますが、そこを上手に活かすことを検討しても良いのではないのでしょうか。

■北海道バイオ産業 売上高の推移・対前年度比
※経済産業省北海道経済産業局
「北海道バイオレポート2007」より