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業界インタビュー

山本強氏

大規模・高機能化がすすむ組込み分野
提案型へのシフトで産業基盤の確立を

札幌市では2015年度までに3万人のIT技術者を確保し、600社のIT企業による売上高1兆円の産業創出を目指している。企業支援事業にも力を注ぎ、その一環として組込み分野のビジネス展開や人材育成にも取り組んでいる。今後ますます期待の高まる北海道の情報産業の中で、札幌の組込み系企業はどのようなビジョンを描くべきなのか。北海道大学大学院情報科学研究科教授の山本強氏にお話をうかがった。
表舞台で活躍する組込み系技術
規模と機能の拡大が一層加速
山本氏

—最近は、情報家電や自動車などの分野でも組込み系技術の担う役割が増していますね。

山本氏(以下Y) これまでは、組込み系というと制御やセンシングなどを行う黒子的な存在でしたが、最近は「目に見える」ものになっています。カーナビなどはまさに「見て、触れて、操作できる組込み機器」の代表選手といえるでしょう。また、ソフトウェアの大規模・複雑化も急速にすすみ、携帯電話やカーナビに組み込まれるソフトウェアの規模は銀行のオンラインシステムを超えるともいわれています。組込み系技術は、今や日常生活の表舞台で高度な機能を発揮する存在になっているのです。

—技術的な面ではどのような変化が起きているのでしょうか?

Y 二つの大きな流れがあります。 ひとつは、FPGA(Field Programmable Gate Array※)や開発プラットフォームの普及により、ハード・ソフトの開発プロセスに大きな変化が起きたことです。FPGAは、LSIの設計・開発で高汎用性・低コスト・短納期を実現し、Windows・UNIXなどの開発プラットフォームや統合開発環境では高機能で大規模なソフトウェアを短期間でつくれるようになっています。
  二つめの流れは「超低消費電力化」です。ユビキタス社会の実現には、超小型センサなどの機器とそれを結ぶネットワークが必要ですが、これらの機器に供給する電力をどうするかが大きな課題になっており、急ピッチで技術開発がすすめられています。―最近は、情報家電や自動車などの分野でも組込み系技術の担う役割が増していますね。
*FPGA/ソフトウェアのようにプログラミング・書き換えが可能な半導体デバイス

首都圏からも評価される組込み文化
歴史と経験に支えられた実力が強み
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—そうした状況の中、札幌の組込み系企業はどのような強みを持っているとお考えですか?

Y 札幌には業界でイニシアティブを取っている会社がいくつかあります。例えば、FPGAベースのハードウェア・プラットフォームとオープンソースのソフトウェアで自社製品を開発している企業などです。組込みシステムでハード・ソフト両方のプラットフォームを提案し、実装できる企業群が札幌にあるというのは非常に大きなアドバンテージだと思います。

—その優位性はどこから生まれてきたものでしょうか?

Y 札幌の組込み系企業はマクロプロセッサが世に出た1970~80年代に誕生し、技術の進歩とともに成長してきました。そこから派生したベンチャー企業には、アセンブラやハンダゴテの時代から積み上げてきた組込みの概念と経験が蓄積されています。行政や自治体によるトップダウン型のIT集積ではなく、地場の産学から発生したエンジニア集団が札幌に組込み文化を根づかせた。それが他の地域にはない大きな特長のひとつであり、本州や首都圏から評価されている点だと思います。

地域のニーズに合ったプロダクトで
「企画開発力」をアピール

—今後、札幌の組込み系はどのような施策が必要ですか?

Y 単に「組込みができる」というだけのアプローチではなく、「組込み技術を使ってこういうものができる、こんな製品がつくれる」という、いわゆる商品企画が求められていると思います。地域のマーケットに近い企業が集まって、多様なターゲットに適応した商品企画・コンセプト企画・デザイン企画が提案できるような体制づくりが必要ですね。組込みとは非常に幅広い技術です。札幌や北海道のニーズに即したプロダクトが目に見える形で登場すれば、それをきっかけにさまざまなアイディアや企画が連鎖的に生まれてくるはずです。だから、各企業や研究グループは「自分たちは何ができるのか」を明確にし、それをわかりやすく伝えるためのプロダクト、つまり「モノ」をつくってみせることが重要だと思います。

—最近は、自動車メーカーなどが道内に多数進出していますが、自動車産業と札幌のIT企業との関わりについてはどうですか?

Y 今、自動車産業で重要視されているのは部品関連のエレクトロニクスです。カーナビや走行制御システムなど、車内に搭載される電気・電子システムは急増しています。北海道に進出している自動車メーカーが求めているのも、それらの設計技術や製造技術のITを提供してくれる地場企業だと思います。札幌にはカーナビの開発経験を持つ企業や、エレクトロニクス・メカトロニクス関連の企業も多く、彼らの期待に応える素養は十分に持っていると思います。しかし、受注するだけでは今までと変わりません。本州で行っていた業務を札幌に移すというのではなく、先ほども言ったように「何ができるのか」を積極的に発信していくことが大切ですね。

札幌で開発拠点づくりを目指すTTDC
組込み系エンジニアの活躍に期待
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北海道は自動車産業の集積に力を注いでいるが、札幌では開発分野の拠点づくりも始まっている。トヨタ自動車の開発パートナーとしてトヨタの車両開発を支えるトヨタテクニカルディベロップメント(TTDC)は、2004年に札幌オフィスを開設。車両電子制御システムなどのソフトウェア開発を手がけている。札幌オフィスを統括する佐藤秀亮氏は「近年急速に拡大・高度化する電子技術分野では多くのエンジニアを必要としています。本社のある中部地区だけで確保するには限界があるため、地方に開発拠点を築き、地場の技術力を活用した開発体制の構築が急務となってきました。その第一弾として進出したのが札幌です」と語る。北海道はIT技術者の数が東京・大阪・名古屋に次いで多く、特に札幌圏には携帯電話をはじめとする組込み系開発の経験者が多数存在することが札幌を選んだ理由の一つ。地場IT企業との関係を深める一方で、技術者や工学系学生の採用にも力を入れていく考えで、道内のIT業界から期待が寄せられている。

トヨタテクニカルディベロップメント株式会社
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