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業界インタビュー

総合的な技術力が求められる食関連産業 北海道の魅力を活かし、新たな市場開拓を目指す
札幌市では、「食」に関する産業・資源の集積を活用した新製品・新技術の開発・事業化等を支援する「札幌市食関連新技術導入促進事業」を実施している。同事業では、財団法人北海道科学技術総合振興センター(以下ノーステック財団)と担い手である企業等が共同で行うモデルプロジェクトを支援し、成功モデルを創出・発信することで食関連産業の振興を図っている。今回は、ノーステック財団アドバイザーとして本事業に携わっている佐藤滋樹氏に、札幌圏にとどまらず北海道全体を見据えた食関連産業のビジョンをうかがった。
高い生産力と加工技術を持つ北海道
今求められるのはマーケットを開拓する力
佐藤氏

—札幌市がノーステック財団と連携して実施している「食関連新技術導入促進事業」は、新規性のある食品や食品加工の新技術などの研究開発を支援するものですね。

佐藤氏(以下S) わが国の食料生産基地を担う北海道は農水畜産物の生産だけでなく、食材の貯蔵・保存・加工でも高い技術を持っています。例えばスイートコーンをはじめとするトウモロコシの加工では全国の約8割、冷凍野菜は約9割を道内で製造しています。北海道は広大な土地で機械を使って行う大規模農業が主流です。その一方、他府県に比べて収穫時期が短いという弱点があり、夏の間に大量生産した農産物を貯蔵または加工して保存し、通年で出荷するというのが特長です。こうした歴史的・地理的背景から、北海道では農水産物を保存・加工する技術が高度に発達しているのです。
 「札幌市食関連新技術導入促進事業」では、北海道産食材の付加価値をより高めることで、札幌の食関連産業が高い商品力と競争力を持つ産業へと成長することを目的としています。平成17年度から実施していますが、豊富な食材に加えて、先に述べたような技術の蓄積もあり、すでに実施したモデルプロジェクトの中から将来有望な新製品・新技術も生まれています。今後は、これらの新しい「芽」を太く逞しく育てていくことが我々の役割だと思っています。

—新しい製品や技術の誕生は食関連産業の発展につながりますか。

S それだけの力では難しいでしょう。食関連産業は「総合技術力」が必要な分野です。産業として発展させるには、優れた原料の生産や加工・製造の技術だけでなく、市場ニーズを的確につかんで商品企画に活かすマーケティング力、商品を道内外に売り込む宣伝力、流通や小売業とのつながりを広げる営業力・販売力なども不可欠です。いくら優れた素材や加工食品があっても、「いいものができたから誰か売ってください」という姿勢ではなかなか普及しません。生産から販売までそれぞれの過程でスキルやノウハウを発揮し、総合的に展開することが重要なのです。
 しかし北海道の場合、一部のブランド化した商品を除くほとんどの加工食品は、本州や首都圏の食品メーカー・スーパー等からの受注生産であり、いわゆる「下請け」の構図が長く維持されています。一村一品のように地域性を活かしたオリジナル商品も登場していますが、その多くは市場も事業規模も小さいものです。今の北海道の食品メーカーは独自にマーケットを開拓する手法やルートを確立できていないところが多く、市場のニーズを吸収して商品開発やビジネスに活かすノウハウも限られています。また、それらを担う人材を育成する組織や仕組みも確立されていないのが現状です。特に農業は、国や自治体の農業政策と密接に結びついているため、生産者や加工業者だけの力で新たなビジネスを興すにはいろいろ難しい面もあります。そのあたりをいかに改革していくか。マーケットを開拓する力、道内外へ向けた販売力をどう醸成していくかが、最も大きな課題だと思います。

「北海道」を冠した商品群の創出を目指し、
ブランドの名に恥じない品質を追求する

—では、食関連産業が発展するためにはどのような施策が考えられるのでしょうか。

S 北海道の素材を使って北海道で加工した商品を「北海道ブランド」として道内外へ発信することではないでしょうか。農水畜産物や菓子などの分野ではすでに「北海道産」であることが差別化になり効果をあげているものもあります。豊かな自然環境と冷涼な気候風土の中でつくられる道産品は、味や風味だけでなく安心・安全という面でも高い評価を得ています。こうした優位性をさらに伸ばし、さまざまな加工食品を「北海道産」として売り込めば、北海道の新たな魅力をアピールする良い手段になると思います。

—素材だけでなく加工食品としても「北海道産」を謳うわけですね。

S 加工食品にもいろいろありますが、発酵や熟成の分野では北海道ならではの自然条件を活かした独自性を打ち出すことができますし、粉砕や濃縮などの技術を高めることで新たな素材が生まれる可能性も秘めています。今回本誌に紹介されている企業は、そうした画期的な手法・技術の開発に成功した好例です。
 とはいえ、「北海道」という名称に甘えてしまってもいけません。ブランド力を長く維持するためにはブランドの名に恥じないものづくりを貫くことが重要です。例えば、品質や味、成分などに一定のレベルを設けて、「北海道」を名乗るためにはこれだけは守らなければならないというガイドラインを設けることも有効だと思います。国や自治体が管理する規格となると設定や管理が大変かもしれませんが、業界内で基準を統一させることは十分可能ではないでしょうか。

生産者と加工業者が同じ目標を持ち、
安定した生産体制を確立する

—北海道ブランドをより競争力のあるものにするにはどうしたらよいのでしょう。

S 最も重要なのは安定した生産体制をつくり上げることです。安定した原料供給、安定した製造技術、安定した品質管理など、それらがすべて整うことで価格も安定し、ブランドとしての信頼・価値を維持することができるのです。まずは生産者と加工業者が同じ目標を掲げて、一緒に取り組んでいるという意識を持つことが必要だと思います。きちんと契約を結び、長期的な信頼関係を築く努力が大切ですね。さらに、製品特性に合った原料のつくり方、工場や設備の仕様、加工の仕方などを統一し、一貫性のある生産体制を築き上げていく。実態に即したマーケティングのもとで事業戦略を立て、販売エリアや消費者のターゲットを明確にし、ニーズに合った製品開発と流通ルートを確立することができれば、輸入品にも負けない競争力が持てると思います。
 そのためには生産者や加工業者だけでなく農協や流通業者、公設研究機関、支援機関、自治体などあらゆる立場の人々が参画し、北海道ブランドの醸成と販売力強化を目指した仕組みをみんなで考えていけるような意識づくりにも取り組みたいですね。国や道でも食関連産業の育成・助成に力を入れていますが、何もかも官主導で行うのではなく、さまざまな角度から必要に応じてサポートしていく柔軟な体制を築くこともこれからの時代には必要でしょう。例えば、新製品の使い方や事業展開に関するアイディアを官民が一緒になって考えていく。そういう支援のあり方も可能だと思います。「食関連新技術導入促進事業」はまさに、そのようなビジョンに立った施策であり、札幌圏のシーズを活かした新たなビジネスを創出することで、北海道の食関連産業の発展につなげたいと思います。

■平成17~19年度札幌市食関連新技術導入促進事業 実施プロジェクト
年度 担い手企業等 モデルプロジェクト
17 西山製麺株式会社 テイクアウト用の食べるスープ等の開発
有限会社亜麻公社 亜麻種子を使った食品の開発
18 札幌バルナバハム株式会社
(現 札幌バルナバフーズ株式会社)
新しい加工食肉製品の開発
クレードル興農株式会社 新しい冷凍軸付きコーンの開発
19 株式会社
北海道バイオインダストリー
北方系機能性野菜活用による
健康志向菓子の開発
サツラク農業協同組合 新規技術を用いた濃縮ヨーグルトの開発